札幌市立大学 SAPPORO CITY UNIVERSITY

研究紹介

design with environment ―― 環境“と”デザインする

話し手:大島 卓
(デザイン学部 人間空間デザインコース 准教授)
聞き手:須之内 元洋
(デザイン学部 人間空間デザインコース 講師)

大島先生は本学の前身、札幌市立高専のご出身ですね。

大島 はい、高専時代にフィールドワークの楽しさを知り、環境デザインをいちから勉強したくて筑波大学に入り直しました。卒業後は(株)Kitaba Landscape Planning(現(株)KITABA)というコンサルティング会社に入社し、公園などの設計や住民ワークショップなどの企画の仕事に4年間携わった後、退職して筑波大学大学院に入りました。

大学院に進もうと思われたのは何かきっかけがあるのですか。

大島 民間企業でランドスケープに関わる設計技術やアイデアは身に付いたものの、もう少し大きな視点からランドスケープを考えてみたくて。研究と実践活動をうまく両立させられないかと思い、2010年、30歳になる直前に社会人枠の大学院入試を受けました。

取り組まれている研究テーマや活動について教えてください。

大島 大学院時代から続けているのが、牧場のランドスケープデザインの調査です。福島県鏡石町に1880(明治13)年に開設した岩瀬牧場という古い牧場があります。現在でも観光牧場として経営されており、場内には明治や大正期の木造牛舎が東日本大震災でも壊れずに残っています。もともとは国がつくった官営牧場だったので、国会図書館や宮内庁に残る資料や図面を調べ、牛舎や樹木などで構成された牧場景観がどのように醸成されていったのかを調査し、実地調査と合わせて、近代化産業遺産としての価値や土地利用変遷について論文にしました。

岩瀬牧場(福島県鏡石町)画像

岩瀬牧場(福島県鏡石町)

ある景観が持っている価値の根拠を客観的に示したのですね。

大島 はい。地元の方は身近な景観の価値に気づいていないことが多いので、歴史的な施設や構造物が壊されたりすることもあり得ます。近代化産業遺産としての価値を明らかにして、保全や活用に向けてその手法をデザインしました。現在は「明治期以降の歴史的な牧場」という視点で研究範囲を広げ、岩手県の小岩井農場、北海道の町村農場、千葉県にあった下総御料牧場なども調査しています。

日本で牧場のイメージができあがっていく過程が明らかになりそうですね。ほかに取り組まれていることはありますか。

大島 札幌市立駒岡小学校の屋上緑化の調査です。元々緑豊かな環境に建つ小学校ですが、校舎背後の学校林と前を流れる精進川との一体感をより高めるため、校舎に屋上緑化施設が整備されています。この屋上緑化は私が民間企業時代に担当し、財団法人都市緑化機構主催「緑の環境デザイン賞」を受賞した企画提案でしたが、屋上緑化には一切手を加えない「粗放的管理」という手法を採用しています。施工から8年経った状態を調査してみると、周囲の森などから種子が運ばれたのか、当初の計画では植栽していないシラカンバなど裸地に最初に生えるといわれる植物種が繁茂していました。

札幌市駒岡小学校の屋上 2018年

札幌市駒岡小学校の屋上 2010年竣工当時

札幌市駒岡小学校の屋上 2010年竣工当時

札幌市駒岡小学校の屋上 2018年

そうした経年変化の観察で、環境デザインについての発見はありましたか。

大島 たとえば屋上緑化も市街地の小学校なら粗放的管理は困難なので、もっと子どもたちの積極的な利用を想定したコンセプトになっていたはずです。環境デザインは建築物や製品をデザインするのとは違って、環境「を」デザインするわけではありません。環境「と」デザインする、つまり対象となるものを取り巻く自然環境や社会環境を調査、評価して、環境と調和した何かをデザインすること。モノとしてデザインしたほうがいいのであれば設計行為になるし、人との関係性を醸成するのであればソフトとしてプログラムの企画になる。民間企業時代はどうしてもモノをつくる前提の思考になりがちだったのですが、大学院で持続可能性や社会にとっての意義など、環境デザインを大きく俯瞰して見る視点が身につきました。

今後はどのような活動を考えていらっしゃいますか。

大島 札幌市円山動物園で北海道ゾーンというランドスケープを重視した計画が進んでおり、その基礎調査の受託研究に関わっています。また、個人的にはモエレ沼公園が今後遊具も含め様々な要素が更新時期を迎えるので、利用実態調査を長いスパンでやってみたいと計画しています。

デザイン学部人間空間デザインコース准教授大島卓写真

デザイン学部 人間空間デザインコース 准教授 大島 卓

札幌市立高等専門学校、筑波大学芸術専門学群を卒業後、(株)Kitaba Landscape Planning(現(株)KITABA)に入社。その後、筑波大学大学院人間総合科学研究科にて博士号(デザイン学)取得。日本学術振興会特別研究員などを経て、2017年より現職。

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