札幌市立大学 SAPPORO CITY UNIVERSITY

研究指導事例

博士前期課程の教員によるさまざまな研究指導事例についてご紹介しています。

研究指導事例(2018年度)

インタラクションデザインによってモノゴトに命を吹き込む
研究テーマ:インタラクションデザイン、インタラクティブアート
学部長/教授 細谷 多聞 [人間情報デザイン分野]
一般的にインタラクションデザインは、人間と人工物(情報)が対象ですが、私の研究室では、自然や環境なども対象に含みます。人と人や、人と人工物とのインタラクションは、世界中で盛んに研究されており、もはやデザインの基盤となる研究領域です。それを超えた対象にも、振る舞いや反応のシステムを与え「モノゴトに命を吹き込む」ことが私の研究室の特徴になっています。研究室に所属する学生は、体表ディスプレイや、手指の簡単なジェスチャーで情報機器を操作する研究に取り組んでいますが、これらは10年後のポストスマートフォン時代に活用が見込まれる研究です。また、環境音の可視化や、自然との関わりのデザインに取り組む学生もいます。インタラクションデザインの研究は、未来の社会を築く基盤となる技術を想像し、その有用性を予め確かめることに意義があります。まるでSF映画のように時代を予見して社会を導くものなので、どのような未来を迎えたいかを考えて研究を進めることが大事です。

建築物のストックを活用して地域の再生につなげていきます
研究テーマ:建築設計、居住計画、リノベーション、既存ストック活用、団地再生、地域再生
准教授 山田 信博 [人間空間デザイン分野]
当研究室では研究結果を設計に生かし、また設計した建築物を調査し、研究に生かすという研究と設計の双方向性を重視しています。特に福祉や地域再生を研究対象とし、実際に設計も行います。北海道の空き家問題は全国に先駆けて深刻な状況にあり、テーマの一つが「ストック活用」。たとえば古い建物をリノベーションする際、古い部分を残すことで、新築では得られない時間の経過を価値として捉えることができます。札幌の団地の再生プロジェクトでは、残すべき価値を見出し、再生へとつなげていく取組をしています。学生にも住民の生の声を聴き、理想の住まいを実現して喜ばれるという設計の醍醐味を味わってほしいですね。また、学外コンペにも積極的に挑んでもらい、成果を上げることで飛躍を期待しています。私たちの周囲には、興味深くわくわくする空間がたくさんあり、それを見出す力がついたら、見慣れた風景は一変します。ぜひ一緒に学びましょう。

研究指導事例(2017年度)

情報プロダクトの評価を通じて、世の中のモノを改善していく
研究テーマ:感性情報学、感性官能計測・評価、情報プロダクトデザイン、ヒューマンインタフェース、教育工学
准教授 柿山 浩一郎 [製品デザイン分野]
本研究室では、プログラミングを通して制作するインタラクティブコンテンツなどを用いて感性情報を取得・解析する研究手法を用います。例えば家電製品を対象に、現行製品のソフトウェアシミュレータを作成し、被験者にそれを操作してもらいます。その操作ログを解析することで、製品の課題(使いにくさなど)を明らかにし、改良につなげます。現状の製品やサービスに対する不満・違和感をクリエイティブに生かし、論理的に裏づけのあるデザイン改善・提案につなげる意欲のある学生諸君のゼミ参加を期待しています。

問題解決に向けて説得力のある筋道を立てたストーリー付けを
研究テーマ:都市公園、遊び場、こども、自然体験、GIS
准教授 椎野 亜紀夫 [空間デザイン分野]
市街地の公園を対象に子どもの外遊びに関する調査・研究をしています。人口減少・少子化が進む中、公園も既存ストックの改修・再整備、選択と集中に向かっています。地域にとってどの公園が大切で、具体的にどうつくり変えるべきか。その必要性や意義について、子どもの視点を含めた合理的な根拠が求められます。学生諸君には問題解決に向けたデータの収集・分析と、その成果を社会にどう還元するか、筋道を立てたストーリー付けを行う力を磨いてほしいですね。

普遍的な原理に基づいて設計された映像や立体、装置などの新しい宇宙を創造する
研究テーマ:メディア芸術表現、コンテンツデザイン、表現原理、計算哲学
准教授 藤木 淳 [コンテンツ・メディアデザイン分野]
私が制作している映像、装置、オブジェなどはプログラムや電子回路などでつくられていますが、既存の手法ではなく、原理から設計します。普遍的な原理に基づく、秩序と媒体が一体となった新しい宇宙を創造したいのです。技術が先にあるのではなく、観察力と内省を深めて根底からつくり上げていく表現こそ、社会と持続的につながりをもつと考えています。学生諸君にはヒトとヒト、モノとヒトとの関係など、関係性を論理立てて設計できるスキルを身に付けてほしいと思います。

研究指導事例(2016年度)

人間を知ることから始まるデザイン、その要は科学的複合アプローチ
研究テーマ:視覚心理学、人間情報処理、立体視、実験心理学、ヒューマンコンピュータインタラクション、実験心理学の手法を用いた感性科学
教授 石井 雅博(コンテンツ・メディアデザイン分野)
よいデザインを実現するには、受け手である人間のことを熟知する必要があります。同様の理由で、我々の活動を助けてくれるコンピュータについて考えるならば、人間を知らなくてはなりません。そのためには、ときにいくつもの科学的アプローチを複合させることが必要です。当ゼミでは、視覚や触覚、また、人間共通の「美しい」という感情を扱ってきました。「何が心地よいのか」「どうすれば使いやすいのか」を突き止めるにはまず、「どんなもの、ことが人の心に触れるのか」を知らなければなりません。そこで心理学や統計学、脳科学の手法を用い、人間の心や感情を研究しています。
昨年度の指導内容を一、二紹介すると、錯視と意識の関係や、ストーリーメイキングの手法の研究など、いずれも大変興味深く広がりのあるテーマでした。私自身の研究にも共通する部分ですが、デザインにおける科学的アプローチを目指し、その基礎となる研究に取り組んでいきましょう。

人間を知ることから始まるデザイン、その要は科学的複合アプローチ。研究中の様子

デザイン×メカトロニクスで、社会的課題への最適解を導き出す
研究テーマ:ロボット、メカトロニクス、組み込みシステム
准教授 三谷 篤史(製品デザイン分野)
メカトロニクスとは、電気と機械と情報の融合技術です。多様な技術を横断的に用いて新しいシステムや機能をつくり、活用する。当ゼミではこのアプローチが各研究の基礎となっています。活用分野のひとつには、本学全体の特長であるD×N(デザインと看護学の連携領域)が挙げられます。
具体的テーマとしては、看護学生や介護者向け教育ツールの開発に取り組んでいます。「口腔ケア」には衛生面のほか、口内粘膜を適度に刺激することで噛む、飲み込む、話すなどの機能を維持する効果があります。そこで、適切な口腔ケアの訓練と評価を行う「口腔ケアシミュレータ」の開発に取り組んでいます。これは看護学生や介護従事者の実習機会を作り出し、ひいては高齢者に多い誤嚥性肺炎の予防にも寄与するものです。
社会の多様な課題と向き合い、その目標、目的、要望にあわせた最適解を求めること。デザイン分野においてロボットおよびメカトロニクスを扱う意義は、その点にあると考えます。

デザイン×メカトロニクスで、社会的課題への最適解を導き出す。の研究中の様子

建築計画学の分野で、設計と研究の双方向性を志向
研究テーマ:建築設計、居住計画、リノベーション、既存ストック活用
准教授 山田 信博(空間デザイン分野)
当ゼミでは、研究と設計を同等に扱い、社会と向き合っていきます。近年、医療や福祉の縮小と地域の再配置が進んでいます。そこで我々は、地域の福祉や地域再生を研究対象とし、ときには研究対象に関わる拠点の設計を実際に行いながら双方向的な活動を進めていきます。日本の住宅の約13%が空き家という状況において、扱うべきテーマのひとつが「ストック活用」です。社寺と違い、日本の住宅は再生せず解体・新築を繰り返してきました。また、高齢者や人口減少などの問題も関係します。札幌でも身近な団地再生のフィールドにも、実際に携わっていく予定です。私自身も、研究と設計実務を経て、双方向的視点を持つに至りました。ですから学生の皆さんにも、地域住民の方たちとの接点が自ずと生まれるよう積極的に外へ出てもらい、また設計実務面では、学外コンペにも挑んでもらいたいです。行動的でチャレンジ精神豊かな学生のため、扉を開いて待っています。

建築計画学の分野で、設計と研究の双方向性を志向。の研究中の様子

研究指導事例(2015年度)

モノからコトへ、デザインをいかにマネジメントするか
研究テーマ:プロダクトデザイン、デザインマネジメント、ヒューマンセンタードデザイン、ウェブデザイン
教授 安齋 利典(製品デザイン分野)
学部では製品デザイン論及びデザイン総合実習を通じ、開発のプロセスであるHCD の考え方に則りつつ、製品デザインの提供価値の最大化について学びました。
研究科においては、この理論とプロセスへの理解及び問題意識を踏まえ、その先にある価値の提供の研究に向かいます。
例えば、製品に不可欠な操作系の背景にはM2M、IoT といったインフラやネットワークがあり、HEMS のように製品がシステム化され始めており、これらを理解した提案が求められます。また、ネットワークやシステム自体にもデザインが関与しつつあります。そこで当研究室では、インタフェース及びユーザーエクスペリエンスに関する新しい価値創造をも研究対象としています。この研究テーマは、デザインがモノからコトへ拡がる状況に即し、バランスのとれた人材の育成にも資すことでしょう。

モノからコトへ、デザインをいかにマネジメントするか。の研究中の様子

建築学を学たらしめる「史観」で、主題に迫る
研究テーマ:建築史・都市史、歴史的建造物の保存、建築構造、建築材料
教授 羽深 久夫(空間デザイン分野)
当研究室のテーマは、建築史を軸に建築全般を広く調査研究することです。例えば歴史的建造物の補修では、設計や材料の来歴や経緯の調査が行われます。また、まちづくりでは地史の読み解きが必須です。このように、建築のどの分野も歴史的展開過程に落とし込むことができる、というのが私の視点です。あらゆる学問分野の確立に歴史学が欠かせないのは自明のことですが、それは建築学においても例外ではありません。
指導は一対一を基本としますが、教室の人間関係は非常に親しみやすく、家庭的な雰囲気です。現在は材料を学んだ学生による「スイスにおけるアールヌーボー建築の研究」、設計に主たる関心をおく学生による「清家清の平屋建て住宅の研究」などが進行中です。建築史的観点を携え、皆さんの好奇心と探求心が発揮できる筋道を見出していきましょう。

建築学を学たらしめる「史観」で、主題に迫る。の研究中の様子

幅広いフィールドで「ヒトとモノの関係」を見つめます
研究テーマ:インタラクションデザイン、インタラクティブアート
教授 細谷 多聞(コンテンツ・メディアデザイン分野)
当研究室で扱うインタラクションデザインとは、広義に捉えるなら「ヒトとモノの関係」です。インタラクションデザインには、インターネットを含めた人為的な分野から環境、自然まで幅広い成立要因があります。これらに対し、客観性の高い、主題のユニークさをあぶりだす手
法を選択しています。
前期課程は研究の基礎を作っていく時期です。大きなテーマを掲げて何年もかけるのではなく、まず本質を見つめて問題を“縮める”プロセスを経て、定められた期間でまとめ、結果を積み上げていく。前期課程ではそうした基礎を身に付け、後期課程ではテーマそのものの確からしさを問い直していきます。大学院進学を目指す方に希望するのは、「なぜ取り組むのか」を知り、迷わず走り出すこと。その背中を押すことは、十分にできると思います。

幅広いフィールドで「人とものの関係」を見つめます。の研究中の様子