札幌市立大学 SAPPORO CITY UNIVERSITY

SPECIAL CROSS TALK #2

知の翼を広げ未来へ

北海道に根差した札幌市立大学とAIRDO
2人のトップが描く新しい地域社会の姿とは

地域への貢献という同じ志をもつ本学と(株)AIRDO。今回は草野晋社長をお招きして、これまでの連携事業や、北海道の未来へ向けた取り組みとその可能性について、本学の中島秀之理事長・学長と語り合っていただきました。

対談日:2019年10月24日  
対談場所:札幌市立大学 芸術の森キャンパス

お話を聞いた方

株式会社AIRDO
草野 晋 代表取締役社長
日本政策投資銀行を経て、2015年からAIRDO副社長として企画や営業を総括。今年度より現職。

大学と企業が協力し、
地域社会への貢献を

中島秀之(以下、中島)私は自分で飛行機を操縦するほど飛行機好きで、この対談を楽しみにしていました。札幌市立大学は公立大学ですから、地域貢献の精神が明確です。デザインと看護の二つの領域で、「知による貢献」を目指しています。

草野晋(以下、草野)AIRDOは昨年就航20周年を迎えました。北海道の翼として、単に人を運ぶだけではなく、家族など大切な人に会いに行くという人生の重要な一場面、さらに北海道への期待も運んでいると感じています。地域社会への貢献という同じ志を持つ札幌市立大学と、連携できるのはありがたいことです。

草野「AIRDOは2018年12月に就航20周年を迎えました。」

中島これまでCIマニュアル(ロゴマークなどの使用規定)の策定就航20周年記念ステッカーで、協力させていただいた経緯があります。デザインの持つ可能性というものを、企業の現場で学生が身をもって体験できるいい機会をご提供いただきました。

草野航空会社は、お客様に安心して利用していただくために信頼できるイメージを持っていただくことが非常に大切ですが、その重要な要素であるロゴマークなどについて運用のマニュアル化が不十分でした。そこで、2017年からCIマニュアルの策定に着手したのですが、当然、その分野の専門知識はありませんので、相談できる相手を探していました。その中で、北海道でデザイン学部をお持ちの札幌市立大学が最適だと考えまして、相談させていただきました。北海道への地域貢献という同じ理念を持っているということが、決定打になりました。

中島協働して一つの事を成すうえで、目指す方向が同じということは非常に重要なことですね。

草野はい。本当に重要です。CIマニュアル策定で驚いたのは、普通であれば運用のルール、あるいは運用の事例をまとめるということが中心になると考えていたところ、「ロゴマークや社名に込められた創業の精神」を確認して、先々までそれを伝えられるようにする工夫が必要だというアドバイスを頂いたことです。学生の皆さんが社員に、入社動機や働き甲斐などをヒアリングしてくださって、「3つのAIRDO物語」という小冊子も作ってくださったんですね。たとえマニュアルであっても、根底に流れる精神が大切だということを認識させられたという意味で、札幌市立大学とCIマニュアル策定ができて、本当に良かったと思っています。

草野「たとえマニュアルでも、根底に流れる精神が大切だということを認識させられました。」

中島就航20周年記念ステッカーも好評だったとお聞きしました。

草野8名の学生さんと社員が一緒に考えを出し合い、春夏秋冬で異なるデザインを作りました。機内で配布したところ、お客様からたくさんお褒めの言葉をいただきました。おそらく、学生と社員で共に作り上げるというプロセスが心のこもったデザインを生み出して、それがお客様にも伝わったのではないかと思います。

中島デザインで何を実現したいかによって、どんなプロセスを選ぶかは重要ですね。そのプロセス自体もデザインの領域に含まれます。私はノートパソコンにそのステッカーを貼っているのですが、客室乗務員の方から声をかけられ、搭乗証明書をいただきました(笑)。デザインは形の意匠ととらえられることが多いのですが、非常に対象の広い学問です。御社からはこの秋、「搭乗体験をデザインする」という新たな授業の実習課題の場をいただきました。

草野航空機をより快適でスムーズに利用してもらうためのサービスデザインと、それを利用者と共有するためのコミュニケーションツールを提案していただくという趣旨で、10名の学生さんにご参加いただいています。

中島学長のノートパソコンに貼られた就航20周年記念ステッカー

多彩なアプローチで
北海道ブランドを向上

中島搭乗までの流れを見てみると、例えばウェブサイトで予約し、空港でチェックインし、荷物を預け、保安検査をしてと、様々なステップがあります。航空会社のウェブサイトに始まって、カウンターでのコミュニケーションなど、それらをどう組み立てることが最適な搭乗体験になるのか。この実習ですぐに成果が出るものではないでしょうが、そうした仕組みを提案し、実現していくことも、知による社会貢献です。乗客にとっての快適な利用を助けることで、個人だけではなく、北海道の活性化にもつながっていきます。このような仕組みを考える機会を学生に与えていただいたのは、ありがたいことです。

草野当社では、社会貢献の三つの柱として、「人を育てる」こと、「自然を大切にする」こと、「災害復興支援などで社会に貢献する」ことを掲げているのですが、今回の連携事業で、北海道の若者の成長の一助になったとすれば、本当にうれしいことです。

中島予約時や空港内、搭乗時のコミュニケーションということでいえば、看護のケアやホスピタリティは、コミュニケーションにとって不可欠の要素です。看護師と医師、あるいは看護師同士のコミュニケーションも研究されています。そうした知見も役に立つでしょう。

草野インバウンドを含めて、多様なお客様をお迎えする航空会社にとって、ホスピタリティの精神や技術は学ぶことがありそうです。また、地上職員と客室乗務員などスタッフ間のコミュニケーションにも、ヒントになりそうなお話ですね。

草野「航空会社にとって、ホスピタリティの精神や技術は学ぶことがありそうです。」

中島「デザイン×看護」を生かすチャンスが、社会にはたくさんあるんです。ところで、搭乗の際にはいつも機内誌『rapora』を読んでいます。

草野実は『rapora』にも地域貢献の一面があります。AIRDOを育てていただいた恩返しとして北海道ブランドの価値向上に寄与できればという思いで北海道の情報発信を行っています。また、客室乗務員が北海道各地を訪れ、その土地のまだあまり知られていない特産品を発掘して、機内販売するということもしています。

中島それはまさにデザインが得意とする領域です。表現や造形の分野というイメージを持たれがちですが、デザインは目的達成のための仕組みづくりも扱います。学生たちは将来、多彩な分野で北海道のブランド力を高めてくれると思います。

イノベーションを
支えられる大学へ

草野AIの専門家の中島学長に伺いたいのですが、今後どのような社会をAIで実現できるのでしょうか。

中島例えばタクシーやバスを最適に配車・運送するシステムの実証実験を北海道で始めています。わかりやすく言うと、「乗り合いタクシー」と「路線のないバス」ですね。利用者がスマホから情報を送ると、コンピュータがタクシーやバスに指示を出し、最適なルートを走って自由に乗り降りできるというイメージです。各地で実験が進んでおり、経済効果や環境負荷軽減も期待されています。北海道の場合、空港から都市へは鉄道や長距離バスを使い、その先はこのシステムで便利に動くという形が考えられます。

中島「タクシーやバスを最適に配車・運送するシステムの実証実験を北海道で始めています。」

草野魅力アップにつながりますね。北海道は広いので、空港からの二次交通の利便性が、観光客誘致の大きな決め手になります。北海道全体の発展を考えても、空港とあらゆる交通機関が連携するのが望ましいと思います。

中島観光客だけでなく、住民も楽しめます。道内各地に行こうと思うと車の移動が中心ですが、このシステムによって自家用車がなくても移動性が高まります。

草野現在、道内七つの空港が民営化する方向で進んでおり、空港の利用方法も変化していくでしょうね。

中島広い目で見ると、移動前の段階からAIが活用できるかもしれません。今だと、基本的に自分で飛行機や鉄道、バスなどの時間を調べて予約をとるわけですが、様々な移動手段を組み合わせた総合的な旅行プランニングを行ってくれるシステムも考えられます。このようなことは旅行代理店が行っていましたが、人が担ってきたことをAIが代わりに行う世の中になっていくでしょう。

草野インバウンドの方も含めて、多様なお客様がそれぞれの目的とニーズをもって、空港に集まってくださっているわけです。その方々に寄り添ったサービスをシームレスに提供していこうと思うと、人の力だけではなく、AIなどの技術に支援をしていただくことも必要になってくると思います。例えば、飛行機の遅れや保安検査場の混み具合などの状況をリアルタイムでお客様が知ることができれば、空港のスタッフに確認しなくてもスムーズに自らの行動を決めることができるでしょう。その一方で、まだまだ、人と人が触れ合うことも大事だと思います。

草野「AIによる支援が必要になる一方で、まだまだ、人と人が触れ合うことも大事。」

中島AIによる自動化や省力化が進めば、そのぶん、人だからこそできるサービスを手厚くできるということにもつながります。AIの発展は人間の仕事を奪うと考えられがちですが、そうではなくて、AIを活用することで人間が仕事の重要な部分に注力することを可能にしたり、新たな仕事を創り出したりすることにつながります。

草野そういうイノベーションを支える人材を育てる大学は、素晴らしいですね。

中島イノベーションは教えてできるものではありませんが、将来イノベーションを起こしそうな人を伸ばすという支援はできます。企業の現場で考える体験も一つの支援です。デザインも看護も、学生たちにはしっかりと基礎を身につけた上で、その型を破る力を社会で発揮してほしいと思っています。北海道の知の拠点として、考える力を持った学生を育て、地域に貢献し続けていきます。

CIマニュアル策定時の打ち合わせの様子(本学デザイン学部生とAIRDO社員様)

対談にご協力いただいた企業様

株式会社AIRDO

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